「老人」観の変転
日本人の平均余命がのび、高齢化問題が盛んに議論されるようになり、在宅福祉が強調されるようになるにつれて・・・
多くの人びと(多数派といってよい)の老人観にある支配的イメージが定着しはじめたと考えられます。
それは、人間にとって長生きすることは幸せであること、老後は家族や近隣の温かいきずなに結ばれ、住みなれた場所で暮すのが幸せであるという観念です。
・・・これは、かつてのように、人生の終末は「枯れる」ことが理想で、できるだけ他に迷惑をかけず、死の準備をするのがよき老人であるという観念とは対極をなしています。
実際には、それほど老後の生活を展望して自覚的に生きるわけではなく、物質的に豊かになり、医療水準が向上した結果、多くの人びとは長生きをするようになったにすぎないのかもしれません。
・・・しかし、長生きをする人がふえて全人口の10%をこえ、そのうち20%をこえることになれば、長生きをすることは問題だとはいえなくなります。
ある年になったら、自分でも苦しまず、他人にも面倒をかけず、さっさとあの世へ旅立つことのほうが幸せだとは本人も思わなくなりますし、他の人もそう思っているなどとはほのめかせなくなります。
・・・これは、決定的に人間が「枯れる」ことを是とする思想の減衰です。